高校2年生の冬。私、綾瀬夏奈は途方に暮れていた。
だって、だって、だって‼︎
今席替えして東と隣になっちゃったんだよ⁉︎
うちのクラス、いや学年一モテる東と隣になっちゃった…
嬉しい?そんなのありえない!
たしかに東のことを好きなかこや、ゆりは嬉しいんだろうけど私にしてみればかことゆりの恨みを買ってしまうことになる。あー、もう最悪、絶対なんか言われる…。
その予想は見事に的中し授業が終わった瞬間にかことゆりが班女みたいなって顔をしてこっちを見てきた。怖い!怖いって!
だから、別に好きじゃないし、安心してね‼︎
という意味を込めて軽く笑ったんだけど、それがかえって逆効果。
かことゆりの顔が鬼みたいになった。
あー、もう最悪!!!
とそこへ私の仲良しの凛恋(リコ)がやってきた。
夏奈〜‼︎大変になりそうだねっ!
うんうん、ほんとだよ〜。(;_;)
だけど凛恋の顔は確実に笑っていた
なに、私が東のこと好きだと思ってる!?
そう思って聞いてみた。
「なんで笑ってるの?」
「えへへ、だってえ、あたしの隣の人だれか知ってるぅ♡?」
「え?誰?」
私は東と隣になったことがショックすぎてそれどころでは無かったんだよー!内心叫びながらりこの話に耳を傾けた
「実は!田辺と隣なの‼︎やっぱり、奈緒と田辺がお似合いとかみんな言うけど〜、ホントは私だったりしてー」
「んー、あは、あははは」
この子凛恋、こと青澤凛恋(アオサワリコ)は、普段は明るくって面白い子なんだけどちょっとわがままなところがあって一緒にいると疲れちゃうんだよね…。
すると後ろから誰かの声がした。
「だーれだ?」
「?あっ、日鞠(ヒマリ)と絵菜(エナ)?」
「せいかーい」
ふふっと笑う二人に凛恋が私が今話してるんだけどと言わんばかりにガンを飛ばしている。こわいよー、怖いよ!凛恋!
それに気づいた日鞠はちょっと引こうとしたけど絵菜はわざとらしく私に内緒話をし始めた。しかもものすごくくだらないこと。
すると凛恋は、ムッとしながらあっちにいってしまった
「夏奈?大丈夫だった?」
「捕まってたみたいだけど…」
絵菜と日鞠は凛恋に捕まっていた私を心配してくれてたみたいだ。
「ん?んーん、大丈夫だよ〜、ありがとう」
絵菜はフルネーム松田絵菜(マツダエナ)。私が心を開いている数少ない友人の一人だ。絵菜は優等生で普段は結構優しいんだけど凛恋に対してはほんとに冷たくて誰がみても相当嫌いなんだなぁっていうのがわかる。
日鞠はフルネーム奥村日鞠(オクムラヒマリ)。日鞠も私が心を開いている数少ない友人の一人。ちっちゃくて可愛らしい見た目なんだけど中身は結構サバサバしてて男っぽい。でも優秀でオシャレで気がきく子。私の憧れの存在でもあるんだ。
「東と隣っていいけど良くないねー」
「いや全然良くないでしょ!」
「「あははは」」
さっきから東、東って東って誰やねん!って思ってる人もいると思う。東っていうのはフルネーム、東翔貴。さっきも言った通り学年一のモテ男子で運動も勉強もできる。だからといって高嶺の花みたいに近づきにくいわけじゃなくて明るくって社交的で友達も多いし、まあモテるのもわかる。私は好きにはならないけどね。だって、なんとなく自分がモテてることがわかってるみたいな態度とるしいろんな女子とめっちゃイチャイチャしてて見てる方が恥ずかしくなってくる…。
そのいろんな女子っていう子の中で一番猛烈アタックをしているのが、さっきの二人。
河野かこ(コウノカコ)と田中夢莉(タナカユリ)。
かこと私はまあ仲が良い方。連絡とかもよくとるしなんとなく一緒にいて楽しい。ただ東のこととなると話は違って、元々強気な性格がありえないくらい強気になってもうほんとに怖い!東のことが好きすぎることで有名な子。どちらかというと顔は可愛い系だと思う。
夢莉は何かでペアになれば話す程度でそこまで親しい方ではないかな。しっかりしてて運動神経抜群だから結構目立つ。だからモテるんだけど夢莉も同じく東一筋なんだよね、色々噂はあるけど…。多分顔は美人系かな。
「…、…な、…つな、…夏奈!!」
突然大きな絵菜の声が聞こえた。
「へっ?はい!」
「まーた、夏奈ぼうっとしてたー!」
「夏奈ほんとよくぼーっとしてるよね」
私そんなによくぼうっとしてるかなぁと思ったけどやっぱりぼうっとしてたのは事実だったからちゃんと謝らなきゃなと思って
「んー、ごめんね、なんか用だった?」
と聞いてみた。
「今度遊ぼうよ!って言ってたの!」
「それで夏奈はどうかなって」
私は嬉しくなってブンブンと首と手を大きく動かしながら
「いくー!絶対いくー!」
と前のめりになって二人にいった。
「「そういうと思った。」」
二人は綺麗にハマらせていったため『そんな綺麗にハモらせんな!』と心の中でツッコんだ。
そろそろ次の授業始まるし絵菜戻ろう?
ん、だね
奇跡的に二人は席が近くになったんだ。羨ましいなーまっでも私も斜め後ろにすずがいたことは奇跡だった。
「すぅずぅ〜泣」
「ん?」
「もうかこと夢莉怖いよぉ〜」
「ほらほらこの鈴音(スズネ)様に相談してみなさい!」
「すーずーー!」
この子は、瀬戸川鈴音(セトカワスズネ)。鈴音ことすずも私が心開いている友人の一人で中でも一番私が何でも相談できる子で親友。面白くてしっかりしてて私はいつも色々我慢しちゃいがちなんだけどすずの前だと素直な私でいられるんだ。
とか言っている間にチャイムがなってしまった。
「ありゃ、チャイムなっちゃったね、あとで話聞くよ」
「うん、ありがとう」
始まったのは私の大嫌いな数学の授業。眠いんだよぉ〜、こっちは隣も最悪だし助けてよお。とそんなことを心の中で叫んでいた時
「夏奈?大丈夫か?」
「…うわあ、ひっ東⁈えっなに?」
「そんな驚く?隣なんだからさ」
なっ?と言いながらも私が驚いたことがおかしかったらしくずっとクスクスと笑っている。
「いっいやうーん、」
「夏奈、翔貴うるさいぞー」
先生から怒られたことにより一瞬でクラスの注目を集めてしまった私たち。全員がこっちを見ていて恥ずかしさで顔が真っ赤になっているのがわかる。
「あっ、すいません」
「すいません…」
はぁ〜とため息をついて一応前を向いた
あっ、そうだ!私誰?って思ってる人いるよね?
私、綾瀬夏奈!見ての通り頭が良い方とは言えません。運動神経も悪いし逆に長所どこ?!
って感じはしてるかな
ぼけっとしながらも一応ノートを取るんだけど…。私目が悪いから黒板が見えん!けど東にノートを見せてもらうとなると席をぴったり東とくっつけなきゃいけないわけで…。それはそれで!うーんと唸りながら目を細めて黒板を見つめていると
「どした?」
と東から声を変えられた
「〜っ、ーー!!」
驚きのあまり声が出ないってこういうことか…。じゃなくて!本当に驚くから突然話しかけるのを辞めて欲しい、まあ、逆に突然話しかけなかったらどうすんだって感じはするけどさ…
「おい、夏奈?」
「えっと黒板が見えなくって…」
「あー、」
するとカタンと小さな音を立てて机をくっつけてきた。
「えっ?」
というと
「うるさくしてまた注目集めんのはごめんだからさ」
と答えられた。
「あっ、うん」
なんか今拒否する選択肢なかったよね?!とツッコミながらもありがとうとお礼を言う
「えっと今あっじゃあこっからかな」
「…うん」
いっいや好きじゃないんだよ?でもやっぱり男子に免疫がない私はドクンドクンと心臓が音を立てる。
うるさい!好きじゃないんだから静まれ!私の心臓!
そんなこんなで死にそうになりながら1日を過ごした。
「すず帰ろー」
「んー、ごめんこの後委員会があるの、ごめんね」
すずは保健委員だからちょこちょこ集められてて大変そう…
「あーオッケー、そっか、また明日ね」
誰と帰ろっかなーと思ってキョロキョロしていると
「夏奈?一緒に帰らない?」
誰かの声が聞こえて振り返った
「あっ、穂乃花(ホノカ)!!」
この子は宮田 穂乃花(ミヤダホノカ)。基本的には多分いい子なんだけど、嘘の噂を流したり自分自慢をしてくることが多々あるからちょっと大変な子だ。でも今日は別に断る理由もなかったし一緒に帰ることにした。
「それでさー、お姉ちゃんがねー」
「うんうん」



くだらない話をしてる間にあっという間に駅に着いてしまった。
「あれ?夏奈今日そっち?」
「あっうん、流石に予備校行くことにしたの。」
「あーそっか頑張ってね!じゃまた明日ー」
「また明日ね、穂乃花。」
一人って寂しいなと思いながら階段を降りていると
「あれ?夏奈?」
と言われて振り返る。
「夢莉?東?」
「あれ夏奈ってこっちじゃないよね?」
楽しそうに話していた夢莉がこっちを振り返っていった。
「あっうん、予備校の関係で、夢莉も違うよね?」
「あー、うん、私は習い事。いつがこっちなの?」「えっと月水金かな」
「本当に⁉︎私月曜は一緒だー!一緒に帰らない?」ときかれちらっと東を見た。二人が付き合ってるという話は聞かないけど東も夢莉もそれでいいのかな?って思って夢莉に聞いて見た。
「ねえ、夢莉?私入っちゃってお邪魔にならない?」
「えっ?ぜーんぜん!私相談したいことあるし、お願い!」
うーん、私はこうやってお願いされると断れないんだよね…
「うーん、そっか、夢莉がいいならいいよ」
「ほんと?ありがとう!」



「あのさ、相談って東のことなんだけどなんかみんなから恋愛相談といえば夏奈だって聞いたから…」
「あー」
そういうことか。私はよく相談をされるからそれにアドバイスしていたらいつのまにか恋愛マスターみたいになってしまっていた。まあ人から頼られるのは嫌いじゃないし恋バナも好きだから別にいいんだけど…。