「故障ってふくらはぎだっけ?そんなに治りが悪かった?」

今度は故障の話か。
呆れて横目で見てしまう。

「ホントにデリカシーとかないんですね」
「あ」と気まずそうな顔に変わる。

その表情が懐かしくて思わず少し笑いそうになる。

「昔、お世話になったのに、きちんと挨拶もしないで消えましたからあの時のお詫び代わりに教えてあげますね」
私は少しだけ表情を緩めた。

「日常生活に支障はありません。でも繰り返し痛みがくるし、膝も悪かったんです。それに跳ぶことに恐怖感が出てて。アスリートとしてはもう無理だと思いました。全国的にはたいした記録も出していたわけじゃないから、競技は諦めることにしました。以上です。で、先輩は今、何を?」

「俺も先月で競技は終了。今は体育教師を目指してるんだ」

「へぇー。先輩が先生!」

「ウケるーとか言うなよ」

「言いませんよ。先輩に教わるなんて楽しそうって思っただけです」

そっか、先生か。

京平先輩が先生。行事はあの派手な色のTシャツとか着て率先して動きそうだな。何となく目に浮かぶ。