考え込んでいたせいで出遅れてしまった。
「千夏、ほらボーっとしないで千夏も早くグラス持ってー」
「千夏?」
ユキの発した”千夏”の言葉に反応したのは京平先輩だった。
「--水口かっ?!」
二人挟んだテーブルの向こう側にいる私としっかり目が合い京平先輩は立ち上がった。
大きく目を見開いた京平先輩に私は身体を固くして目を伏せた。
「え?なになに?二人は知り合いなのー?」
「知り合いか?」
男子からも女子からも驚きの声が上がる。
「あ、俺の高校の後輩。2年振りか。こっちにいるって知らなかったから驚いた」
「そっかー。偶然だね。じゃ、乾杯しよ、乾杯。先輩後輩の積もる話はあとでやってー」
”積もる話”など私はしたくないに決まっている。
この場の雰囲気を読んだらしい京平先輩は「そうだな」と言って生ビールのジョッキを持ち上げた。
それを見た幹事の上浦先輩が「じゃあも一回カンパーイ」と声を張り上げる。
「かんぱーい」の声に仕方なく私もグラスを持ち上げた。
ノンアルコールカクテルのグラスを持つ手が震えている。
離れていたけれど京平先輩の視線を感じて顔を上げることができない。
それから、逃げ出すこともできずにユキと上浦先輩の会話に参加するふりをしていた。
どうしてこうなった。
まるで刑の執行を待っているようだと思う。
そんな私とは反対に京平先輩は周りと楽しそうに会話しながら料理を口に運んでいるようだった。
やがて、せっかくだからやってみようと誰かが声をあげ、一人、二人とシミュレーションゴルフの機械横のソファーへと移動していく。
ユキが立ち上がるのを見て、私も立ち上がろうとしたところで
「ちょっといい?水口」と京平先輩の声がした。
「千夏の先輩なんですね。懐かしい話もあるでしょうから、どうぞどうぞ」
ニコニコと手を振ってユキが離れていく。
待って、と言う前にユキは「私もやってみたいですぅ」と私の方を振り向きもせずシュミレーションゴルフの方に行ってしまい、料理が残る大テーブルに残っているのは京平先輩と私だけになっていた。
「さてーーーと。水口」私の隣の椅子に腰かけた京平先輩が低い声を出す。
ごくりとつばを飲み込んだ私は大きく息をついてから声を出した。
「久しぶりですね、京平先輩」
「千夏、ほらボーっとしないで千夏も早くグラス持ってー」
「千夏?」
ユキの発した”千夏”の言葉に反応したのは京平先輩だった。
「--水口かっ?!」
二人挟んだテーブルの向こう側にいる私としっかり目が合い京平先輩は立ち上がった。
大きく目を見開いた京平先輩に私は身体を固くして目を伏せた。
「え?なになに?二人は知り合いなのー?」
「知り合いか?」
男子からも女子からも驚きの声が上がる。
「あ、俺の高校の後輩。2年振りか。こっちにいるって知らなかったから驚いた」
「そっかー。偶然だね。じゃ、乾杯しよ、乾杯。先輩後輩の積もる話はあとでやってー」
”積もる話”など私はしたくないに決まっている。
この場の雰囲気を読んだらしい京平先輩は「そうだな」と言って生ビールのジョッキを持ち上げた。
それを見た幹事の上浦先輩が「じゃあも一回カンパーイ」と声を張り上げる。
「かんぱーい」の声に仕方なく私もグラスを持ち上げた。
ノンアルコールカクテルのグラスを持つ手が震えている。
離れていたけれど京平先輩の視線を感じて顔を上げることができない。
それから、逃げ出すこともできずにユキと上浦先輩の会話に参加するふりをしていた。
どうしてこうなった。
まるで刑の執行を待っているようだと思う。
そんな私とは反対に京平先輩は周りと楽しそうに会話しながら料理を口に運んでいるようだった。
やがて、せっかくだからやってみようと誰かが声をあげ、一人、二人とシミュレーションゴルフの機械横のソファーへと移動していく。
ユキが立ち上がるのを見て、私も立ち上がろうとしたところで
「ちょっといい?水口」と京平先輩の声がした。
「千夏の先輩なんですね。懐かしい話もあるでしょうから、どうぞどうぞ」
ニコニコと手を振ってユキが離れていく。
待って、と言う前にユキは「私もやってみたいですぅ」と私の方を振り向きもせずシュミレーションゴルフの方に行ってしまい、料理が残る大テーブルに残っているのは京平先輩と私だけになっていた。
「さてーーーと。水口」私の隣の椅子に腰かけた京平先輩が低い声を出す。
ごくりとつばを飲み込んだ私は大きく息をついてから声を出した。
「久しぶりですね、京平先輩」



