山下さんから指定されたのは大学内のカフェだった。
自分たちが使わない校舎にあるここに足を踏み入れるのは初めて。
先に来ているはずの山下さんを探してきょろきょろしながら入って行くと、窓際の席で手を振る姿が目に入った。
「お待たせしました」
「千夏ちゃんここ座って。何飲む?甘いのと甘くないのはどっちがいい?ちなみに俺のおすすめは甘いのならキャラメルソイラテで甘くないのはカフェ・マキアート」
「あ、甘いのがいいです」
「じゃあ嫌じゃなければ、俺のおすすめ試してみて」
キャラメルも豆乳も嫌いじゃない。むしろ好きな方だ。
こくりと頷くと自分で買いに行くと言った私を制して山下さんはごく自然に席を立ってカウンターに向かって行ってしまった。
なんだか、この人、顔だけじゃなくて行動もスマートなんだな。
警戒心は薄れないけれど、話はしっかり聞こうと思った。
山下さんがキャラメルソイラテを手に戻ってくる。
それを私に差し出しながら、「来てくれてありがとう。これ、話を聞いてもらうお礼に俺のおごりだから遠慮しないで」とニコリとした。
その笑顔に疑問が浮かぶ。
この間の笑顔と少し違うかも。まさかと思うけど、山下さんの表情がわずかに硬いような気がする。
「えっと、山下さんの話って・・・」
「うん、千夏ちゃんの隣の部屋の斎藤さんのことなんだけどね」
そう切り出した山下さんの顔は胡散臭いアイドルのようじゃなくて素の山下さんの顔なんだろうけど、また微妙な感じの困ったような笑顔だった。
「恵美さんですか」
「うん、そう。斎藤恵美さん」
山下さんが笑顔を引っ込めて真面目な顔になった。
「彼女、そこで怪しげな男と一緒に住んでるって聞いたんだけど・・それって本当かい?」
は?怪しげな男?
「恵美さんが、ですか?」
ああと山下さんが頷く。
「そんな人は見たことないです」
「え?じゃあ男のところに行って帰ってこないとかーーー?」
「知りません。そりゃあ毎日監視してるわけじゃないからたまにはいないのかもしれませんけど、よそで同棲してるって感じるほど留守にはしてないはずです。うちのアパート、騒がなければ話し声はあまり聞こえませんけど、キッチン同士がくっついてるから水の音が聞こえてくるんです」
自分たちが使わない校舎にあるここに足を踏み入れるのは初めて。
先に来ているはずの山下さんを探してきょろきょろしながら入って行くと、窓際の席で手を振る姿が目に入った。
「お待たせしました」
「千夏ちゃんここ座って。何飲む?甘いのと甘くないのはどっちがいい?ちなみに俺のおすすめは甘いのならキャラメルソイラテで甘くないのはカフェ・マキアート」
「あ、甘いのがいいです」
「じゃあ嫌じゃなければ、俺のおすすめ試してみて」
キャラメルも豆乳も嫌いじゃない。むしろ好きな方だ。
こくりと頷くと自分で買いに行くと言った私を制して山下さんはごく自然に席を立ってカウンターに向かって行ってしまった。
なんだか、この人、顔だけじゃなくて行動もスマートなんだな。
警戒心は薄れないけれど、話はしっかり聞こうと思った。
山下さんがキャラメルソイラテを手に戻ってくる。
それを私に差し出しながら、「来てくれてありがとう。これ、話を聞いてもらうお礼に俺のおごりだから遠慮しないで」とニコリとした。
その笑顔に疑問が浮かぶ。
この間の笑顔と少し違うかも。まさかと思うけど、山下さんの表情がわずかに硬いような気がする。
「えっと、山下さんの話って・・・」
「うん、千夏ちゃんの隣の部屋の斎藤さんのことなんだけどね」
そう切り出した山下さんの顔は胡散臭いアイドルのようじゃなくて素の山下さんの顔なんだろうけど、また微妙な感じの困ったような笑顔だった。
「恵美さんですか」
「うん、そう。斎藤恵美さん」
山下さんが笑顔を引っ込めて真面目な顔になった。
「彼女、そこで怪しげな男と一緒に住んでるって聞いたんだけど・・それって本当かい?」
は?怪しげな男?
「恵美さんが、ですか?」
ああと山下さんが頷く。
「そんな人は見たことないです」
「え?じゃあ男のところに行って帰ってこないとかーーー?」
「知りません。そりゃあ毎日監視してるわけじゃないからたまにはいないのかもしれませんけど、よそで同棲してるって感じるほど留守にはしてないはずです。うちのアパート、騒がなければ話し声はあまり聞こえませんけど、キッチン同士がくっついてるから水の音が聞こえてくるんです」



