『かがみ台星空観測会 参加自由』

「これね、サークルに入ってなくても参加できる地域の人たちが主催のイベントなの。小学生からおじいちゃん、おばあちゃんまで地域に住んでなくても誰でも参加OKなのよ。その日私は用があって行けないけど、よかったら来てみて。違う大学にいるメンバーも参加する大きなイベントだから。行けばわかる、楽しいわよ」

『主催 かがみ台町内会』

確かにそう書いてある。
 
「ふうん、サークルメンバーの解説付き、ね」
恵美さんが私の肩口からビラをのぞき込みまじまじと見つめて小さく呟いた。

「斎藤さんもどう?運が良ければ流れ星が見られるかもしれないよ」
アイドルもどきさんがニッコリと笑いかけてくると
「ちなっちゃん。行くのなら気を付けてね。夜のイベントだし」
と恵美さんがアイドルもどきさんを警戒するように私の腕をぐっと引き寄せた。

「ひどいな、俺は何も警戒されるようなことしないって。そんなに心配なら斎藤さんも一緒に来たらいい」

「私は家庭教師のバイト入ってるからムリ。だから忠告。この子は入学したばかりの未成年なのよ」

恵美さんに優しい目を向けるアイドルもどきさんと、毛を逆立てる猫のようにピリピリとしている恵美さん。

どんな関係かわからないけれど、二人の間にちょっとした友人とか同級生というのとは少し違う空気を感じる。
親密そうな柔らかい空気はなくてメガネの奥の恵美さんの目は怒っているようにも見える。

恵美さんとアイドルもどきさんのやりとりをはらはらしながら聞いていると、柴田さんが口を開いた。

「大丈夫。観測会そのもので危ないことはないと思うから。帰り道が心配なら、山下じゃなくてサークルの安全な男子をボディーガードにつけてもいいし」
とてもキレイな笑顔でそう言った。

「山下じゃないならいいかもしれないけど・・・」恵美さんが頷き、
「ひどいな。俺も安全なのに」と山下という名前らしいアイドルもどきさんが苦笑している。

私以外の三人で進んでいく会話と恵美さんの山下さんを見る冷めた視線が気になり、もはや「私、行くとは言ってないんですけど」とは言えない雰囲気になっていた。