もう思い切ってがっつり見てしまおうか。

そっと頭を隣に傾けて視線を移した私は固まった。

ーーーーうそ。

樹先輩は私を見ていた。

彼はこちらを向いていて私と目が合うと、ふっと笑顔を浮かべた。
はっきりと見えた。笑顔だ。
そして私から視線を外し、天井に広がる満天の星空を見あげている。

どきんと大きく自分の胸の音がして、そこからどんどん早鐘のように鼓動が早く打ち鳴らされていく。

やばい・・・何かわからないけど、とにかくやばい。

彼と目が合った時私はどんな顔をしていただろう。笑みを返すこともできなくて大きく動揺したから変な顔をしてたんじゃないかな。

私は恥ずかしくて樹先輩から視線をそらしたものの、天井を向いてもナレーションの声も星空もフィルターがかかったみたい。

胸だけでなく喉や頭にまで心臓があるんじゃないのってくらい心音が全身で響いているし、身体が熱い。

樹先輩、なんでこっちを見ていたの?
なんでそんなに笑顔?
どうしてそんな素敵な笑顔を私に向けてくれたの?

勘違いしてしまうからやめて欲しい。

でも嬉しい。
あの先輩の笑顔を見ることができて単純に嬉しい。

ドキドキが止まらず、手をぎゅっと握りしめてまた星空を見つめた。