私は移動プラネタリウムという滅多にない経験をさせてもらえそうなので素直に付いていくことにした。
サークルには入らなかったけれど、星空はずっと好きで学生時代一人でプラネタリウムに行くこともあった。

電車を乗り換えしながら樹先輩に連れられてやってきたのは海から離れた山の中腹にある上品なホテルだった。

フロントを通り過ぎ、パーティールームのあるフロアに案内される。どうやら廊下を挟んで二つの広間がリザーブされているようだった。
一部屋はプラネタリウムのために、もう一部屋はパーティーの支度がされている様子。

パーティーの部屋にはここのホテルスタッフたちが慌ただしく出入りしているけれど、プラネタリウムが設営されているらしい部屋の扉は閉まっていて中の様子を窺うことはできない。

夜からのパーティーのため当然まだ出席者の姿は一人も見えず、今ここに居るのは全て裏方さんで皆忙しそうに動いている。ここに入り込んだ異分子の私は居心地が悪くて仕方ない。樹先輩の後ろに隠れるようについていった。

どんな人たちのどんなパーティーなのかわからないけれど、相当お金がかかっているみたい。

チラリと見えたパーティー会場は至るところ生花やキャンドルで飾り付けられていて、更にアイボリーとワインレッドのバルーンの準備がされている。
使われている色合いが上品でとてもセンスがいい。

「もしかして、結婚式ですか?」

「いや、結婚記念日のパーティーって聞いてるよ」

「結婚記念日のですか」

確かに落ち着いていてキラキラした甘さは少ない飾り付けだとは思ったけど。
なんとまあ豪華な結婚記念日なんだろう。