いつまでも樹先輩には私のことを気にしていて欲しかった。
だからあの時2年後に会いたいと言われてそれがどんな形だったとしても本当に嬉しかった。
でももうとっくに自分が過去の人になっていたとは。
はぁーっと息を吐いて山下さんに笑いかけた。
「もう私もいい加減に忘れて前に進まないとですねー」
「待て待て。結論を急がないで、千夏ちゃん」
ワインをがぶ飲みしようとグラスを持ち上げた私の右手を慌てたように山下さんがつかんで止める。
「何で止めるんですかぁ。結局忘れられてたかもうどうでもいいって思われてたってことでしょ」
恨みがましい目を向けると、山下さんは首を横に振った。
「そんなの確認しないとわからないだろ」
確認しなくてもいい。確認したら余計に傷ついてしまう。
「俺はこのままにしても千夏ちゃんが前に進めるようにはならないんじゃないかって思うんだよね。ちょっとさ、今あの京平先輩ってヤツに連絡して聞いてみて」
「え?京平先輩ですか?」
「そう。倉本君と千夏ちゃんを結び付けてるのは彼だけなんだろ?で、彼は倉本君が帰国してるかどうか知らないはずがないと思うんだ」
「・・・そうですね」
京平先輩が卒業して3年。
京平先輩が地元に就職してから私と会ったのは去年が最後だ。
でもそれからもたまにメッセージのやり取りをしていた。中身はくだらないことだったけど。
元気か、クリスマスはどうしてる、今日の給食のカレーはうまかったとか今の仕事はどうだとか。
京平先輩、私に樹先輩のことを言えなかったんだろうな。
でも、会わなくてもいいから帰国したことくらい教えてくれたらよかったのにと少しだけ思う。
「京平先輩なりに気をつかったんでしょうね」
「そうかな?そうじゃないかもしれないよ」
山下さんの少し棘のある言い方に私は俯いてた顔を上げた。
「それどういう意味で言ってます?」
「いいから。その答えもわかるから。今、連絡してみて。ちなっちゃんは倉本君、じゃなかった、ええっと”樹先輩が帰ってきてるのは本当ですか”って聞くんだぞ」
半ば強引にスマホを出すように指示されて私は京平先輩にメッセージを送った。
それはすぐに既読に変わり、そうして来た京平先輩からの返事はメッセージではなく電話だった。
テーブルの上に置かれたスマホの着信に先に気が付いた山下さんは私に電話に出るように「ほら」と促した。
それに小さく頷いてスマホを握って急いで店の外に出る。
京平先輩は何と言うんだろうーーー
だからあの時2年後に会いたいと言われてそれがどんな形だったとしても本当に嬉しかった。
でももうとっくに自分が過去の人になっていたとは。
はぁーっと息を吐いて山下さんに笑いかけた。
「もう私もいい加減に忘れて前に進まないとですねー」
「待て待て。結論を急がないで、千夏ちゃん」
ワインをがぶ飲みしようとグラスを持ち上げた私の右手を慌てたように山下さんがつかんで止める。
「何で止めるんですかぁ。結局忘れられてたかもうどうでもいいって思われてたってことでしょ」
恨みがましい目を向けると、山下さんは首を横に振った。
「そんなの確認しないとわからないだろ」
確認しなくてもいい。確認したら余計に傷ついてしまう。
「俺はこのままにしても千夏ちゃんが前に進めるようにはならないんじゃないかって思うんだよね。ちょっとさ、今あの京平先輩ってヤツに連絡して聞いてみて」
「え?京平先輩ですか?」
「そう。倉本君と千夏ちゃんを結び付けてるのは彼だけなんだろ?で、彼は倉本君が帰国してるかどうか知らないはずがないと思うんだ」
「・・・そうですね」
京平先輩が卒業して3年。
京平先輩が地元に就職してから私と会ったのは去年が最後だ。
でもそれからもたまにメッセージのやり取りをしていた。中身はくだらないことだったけど。
元気か、クリスマスはどうしてる、今日の給食のカレーはうまかったとか今の仕事はどうだとか。
京平先輩、私に樹先輩のことを言えなかったんだろうな。
でも、会わなくてもいいから帰国したことくらい教えてくれたらよかったのにと少しだけ思う。
「京平先輩なりに気をつかったんでしょうね」
「そうかな?そうじゃないかもしれないよ」
山下さんの少し棘のある言い方に私は俯いてた顔を上げた。
「それどういう意味で言ってます?」
「いいから。その答えもわかるから。今、連絡してみて。ちなっちゃんは倉本君、じゃなかった、ええっと”樹先輩が帰ってきてるのは本当ですか”って聞くんだぞ」
半ば強引にスマホを出すように指示されて私は京平先輩にメッセージを送った。
それはすぐに既読に変わり、そうして来た京平先輩からの返事はメッセージではなく電話だった。
テーブルの上に置かれたスマホの着信に先に気が付いた山下さんは私に電話に出るように「ほら」と促した。
それに小さく頷いてスマホを握って急いで店の外に出る。
京平先輩は何と言うんだろうーーー



