星空電車、恋電車

「それから連絡は?」

私は黙って首を横に振った。
それきりだったのだ。2年前に京平先輩を通じて連絡があったきり。

「仲介役の先輩は何て?」

「何も。先輩の所にも連絡ないみたいです」
私は目を伏せた。


あれから4年に歳月が流れて一昨年京平先輩は卒業して地元に戻り中学校の体育教師になった。
私も昨年卒業して神戸で就職をした。

京平先輩とはたまにメッセージをやり取りするだけの仲が続いているけれど、樹先輩が帰ってきたとかひと言も聞いたことはない。

「千夏ちゃん。もしかして今でも倉本君のこと」

「そんなことないですよ。だって付き合ってたの高校生の時ですよ。それにもう4年も会ってないし」

「いいよ、今さら俺に隠さなくても。俺と恵美はそのままの千夏ちゃんを知ってる。今でも引きずってるだろ。
去年仕事で知り合って付き合おうって言われた男とだって結局自分自身を見せることなく離れたんじゃないのか?」

「・・・そうなんですけど」

そうなんですけどね。
付き合って欲しいと言ってくれた2歳上の男性はとても感じのいい人だった。
でも、私は踏み込むことができなかった。

心の中にはいつも樹先輩がいたから。
例え連絡してくれなくても、彼が私のことなど忘れてしまっていても。