星空電車、恋電車

どうやら私が想像していたこととは少し違うのかもしれない。
でも、だったら私が見たものは?

「私、樹先輩が彼女と手を繋いで楽しそうにデートしてるところを見ました」

「ーーーごめん。あれ、痛みの伴う治療が決まったときだ。病院を抜け出すほど治療を嫌がってさ。俺と手を繋いで一緒にタピオカのデザートを食べに行ってくれたら治療するって桜花が言いだして、困った桜花の両親に頼みこまれて」

俺、間違ったことばっかしてたな、と小さな声がした。

「楽しそうに見えたかもしれないけれど、楽しくはなかったよ。そう見えるように笑顔を作ってた。楽しそうにしていなかったら桜花は治療しないって言いだすかもしれないし。桜花を応援したいって気持ちはあったからね。それで大事な人が傷つくのなら別の方法をとるべきだった。今更だけど、ごめん、千夏。やっぱりあんなことするべきじゃなかった」

でも、そう桜花さんとそのご両親に頼まれて樹先輩が断っていたら?
そんなのは樹先輩らしくない気がする。

私が知っている樹先輩はそんな冷たい人じゃなかった。

「ちゃんと教えて欲しかったです。私に。ただイチャイチャは許せなかったと思いますけど・・・」

「千夏」

「私に桜花さんを助ける手伝いをするって教えて欲しかったです。私、知りたかったです」

私もきちんと今の想いを伝えようと思った。

「樹先輩は見捨てたりできる人じゃないのはわかってます。でも、もう少し違う方法で助けてあげて欲しかったとは思います。でも、私も樹先輩に何も言わなかったからダメなのは私も同じですよね。私は辛くて樹先輩と陸上から逃げましたから」

もうひと言、もうひと言だけ言っておかないと。
この人は行ってしまう。

「先輩はどうして2年後に私に会いたいと思うんですか?」

「・・・・自分を鍛え直してくる。このまま千夏と他人になりたくない。出会っても知らない顔をすることなんてしたくないんだ。今でもずっと千夏のことが忘れられない」

ひゅっと喉の奥がなりそうになった。

今、なんてーーー