恵美さんにお礼を言って売り子を交代した。

ショーケース内を確認すると、三種類のケーキのうち一種類は既に売り切れていた。プリンもあと1つだけ。

その他に残っていたのはシャルロットとガトーショコラが一つづつ。その並んでいる姿は何となく柴田さんと樹先輩の姿と重なる。

・・・シャルロットは綺麗な女性、柴田さんのイメージにぴったりだと思った。

ふんわりサクサクのビスキュイ生地に木いちごのムースが詰められてイチゴとブルーベリーがトッピングされている彩りも鮮やかでとても綺麗。

ガトーショコラは樹先輩の好物で、大会の後でみんなで寄り道したカフェで美味しそうに食べていたのも間食のプロテインバーもいつもショコラ味だった。甘くてほろ苦いガトーショコラを見るといつだって樹先輩のことを思い出す。


モヤモヤする。

さっきの光景に。
そして、もっとイラつかせているのは自分の気持ちだ。

私は多分まだ樹先輩のことが好きで、樹先輩に触れる柴田さんを見ると激しい嫌悪感がしてーーー自分が嫌になる。

柴田さんを見て桜花さんを思い出し、樹先輩との過去の日々を思い出す。

あれから2年以上たっているのに桜花さんと手をつないだ樹先輩の姿が何度も夢に現れて泣きながら目が覚める。

今は私が言った通り樹先輩は他人のふりをしてくれているというのに、未だに私には怒りにも似た胸の痛みがする。



どうして
どうして
どうして

どうして私は逃げたのに
どうして私は忘れられないの
どうしてこんなに好きなの

もう傷つきたくないのにーーー