ルイとの電話が終わると、俺はちょっと前の事を思い出していた。

そう、あれはルイが俺が日本に戻ってきてすぐの時に、視察だとか言って社に来ていた時の事を。

「あの子を絶対秘書にしないと、ここで仕事やっていけないぞ?」

たまたま(あれはイジワルだとか言ってたな)、5階で降りたルイが社長室に行く為に、その場にいた社員に案内をさせた。その時に、フランス語で案内したのが、涼香だった。

涼香自身、ルイがフランス支社長だとは知らず、ただの客だと思ったみたいで案内したらしいが、ルイに目をつけられたとはその時は思いもしなかっただろう。
その話を聞いた匠も動くのが早かった。

その日の内にそれが誰なのかを見つけていたんだから。

後は強引に、俺の秘書にする為に動いた。

あの時は、無茶苦茶だなと俺自身も思ったが…。だが、秘書になった涼香は、思っていた以上の働きをした。
秘書の仕事は初めてだと言っていたのに、そんな事を感じさせないぐらいの仕事ぶりに驚いた。
身のこなし方から、仕事の進め方についても。そんな小さな事から俺は涼香から目が離せなくなった。

後から、SEIWADOの前社長に付いて、勉強していたんだから、その動きが出来ていたと分かって腑に落ちたんだが。