兄との会食の場である割烹に着く頃、園田さんから電話が入った。

「涼香さん、今日の会食をキャンセルしたいんですが、よろしいですか?」

「は、はい?園田さん。どうして?朝、兄と話した時そんな事話してなかったけど…」

「すみません。会長から社長が注意を受けましてね。いい加減にしろ、と」

「父が?はい、わかりました。じゃ、また、はい失礼します」

電話を心配そうに見ていた、蓮さんが顔を覗き込んできた。

「どうした?」

「会食キャンセルになりました。食事はそのまましてこい、と。会計もSEIWADOで払ってあるから気にしなくていいと」

「え?キャンセル?なんでまた…」

「…この間、実家に帰った時に父に言った事が、効いたみたいです。兄が注意された、とか…」

マジか、と口を押さえていた蓮さんも、SEIWADOの会長である私の父の行動力に感服していた。

父に話してて助かった。
今日の会食がなしになるぐらいだから、かなり言われたんじゃないだろうか。

車を駐車場に入れた蓮さんは、ご好意だからと食事をして帰ろうとそのままお店に向かった。

落ち着いたお店で、ゆっくりと食事をして私達は帰ってきた。

帰りの車の中で、蓮さんはハンドルを持ってない反対の手で、私の手を握った。

「涼香、愛してるよ」

「っ、蓮さん…改まって言われると、恥ずかしい…」

「言っとかないと、どっかに行きそうだから…」

「行かないですよ。蓮さんこそ、離さないで下さいね。しつこいですよ、私」

私はその手を掴んでキスをした。