テーブルに手をつき、前に乗り出した私を、慌てないでと園田さんは言ったけれど、慌てないでいられる事じゃなかった。

会社を離れる、SEIWADOから引くとは…

「実は、五十嵐さんのご実家の病院が危ないそうで、相談があったとか…、医師離れもその一つらしく、医師としてきて欲しいと言われた、と。俺は受けるつもりだと言われました」

医師に戻る?
兄の夢だった医者と言う道を断たせたのは、私だ。
私があのまま、SEIWADOの後継者としていたらこんな事にはなってなかっただろう。

ただ…私には、離れないといけない理由があった。

それが何なのか、誰も知らない。
父にも、兄にも言ってない。
ただ、継ぎたくない、と。私が器ではないと。


だけど…

「涼香さん、社長から言われました。自分がいない間の会社をあなたに任せたい、と。勝手お願いしている事は分かっているが、どうにもならない。今の会長にはお願い出来ない、と」

「そ、そんな…私にって言われても…」