あれから3年…夏帆さんの身に何かあったんだろうか。
1年前、私は兄にSEIWADOを託した。継ぐのは私じゃないと思ったから、夢を叶えて医師としての道を進んでいた兄には申し訳ない事をしたけれど。
その時は、夏帆さんの事は名前すらも聞かなくなっていた。だから、過去の事になっているもんだとばっかり思っていた。

「涼香さん?大丈夫ですか?」

「え…?」

私の顔を、園田さんが心配そうに覗き込んでいた。

「大丈夫ですか?五十嵐さんの事で何か?」

「いえ、大丈夫です。すみません、園田さん、兄を迎えに今から行くんですよね?」

「え?あぁ、行きますよ。それが?」

「兄の様子見ていてもらえますか?そして今回の佐伯社長の事は兄には内緒にしてて下さい。お願い出来ますか?」

「涼香さん、私は社長の秘書です。分かりましたと言えるとお思いですか?」

「…っ」

いつもの冷静な秘書の園田さんがそこにいた。
私は返答に戸惑った、兄の秘書なのに、私の言う事を聞く訳がない、と。

「…と、言いたい所ですが、社長の事は私も心配ですので、涼香さんには報告させてもらいますよ。ただし、私におしえてくれますよね?五十嵐さんの事も含めて…」

「園田さん…、兄が戻ってきたら、様子教えてもらえますか?その時にお話します。電話じゃなく、誰もいない所で話がしたいんです」

私の表情を見て何かを悟ったのか、園田さんは、分かりましたと言って兄を迎えに行く準備を始めた。

私が、会社に戻った数時間後、園田さんから電話があった。

「涼香さんの嫌な予感、当たってますよ」