橘さ話の突然の訪問に、驚いた私達だったけれど、ルイさんが橘さんをたしなめていた。

橘さんを来客室に案内し、私達はソファに腰をかけた。

淹れたコーヒーを飲みながら、橘さんは、私と蓮さんを見比べていた。

視線が刺さるな、これは絶対私が何者なんだろうと思っているはず。
私から言ってもいいものなのか、それとも蓮さんが話しをするんだろうか…

考えていると、蓮さんが口を開いた。

「橘さん、ここまで来てもらって申し訳ありません。お気持ちは嬉しいんですが、私にはもう決まった女性がいるんです。横にいる彼女です。もう結婚式の日取りも決まっています」

「え?け…結婚式?そんな相手がいるなんて聞いてないわ!」

日取りも決まってるって…蓮さん、まだいつ頃なんて話してないのに。
驚いて蓮さんを見ると、大丈夫と頷かれた。

「婚約した話は、ここ数ヶ月の話です。私が東京本社に戻ってきてからの話なんですよ」

恥をかかされたと思ったのか、橘さんは顔を真っ赤にして立ち上がった。

「付き合ってる人がいないって言ってたのに、騙されたわ。父に話してやるから!」

そう言うと、扉を開けて出て行った。