蓮さんと昼食を一緒にした後、蓮さんは出かける先があるからと一人で出かけて行った。

私も一緒に、と声をかけたが一人で大丈夫だから、社に残って仕事をしていて欲しいと言われて、私は書類整理をしていた。
思いの外、仕事がはかどり予定の業務が終わった私は、蓮さんが帰りが遅くなるかと思うから先に帰ってなさいと言われていた事を思い出した。
ちょうどいい機会だからと、父に電話をかけた。

「もしもし、涼香です。今、いいですか?」

「どうした珍しいな?急ぎか?」

父と和解してから、父は優しくなったような気がしていた。
元々優しい人ではあったと思うが、会社のトップに立つ人間故、厳しいのが、目立っていたのかもしれない。

「…兄さんの事、言ってくれたんだ?」

「あぁ、悠貴はしつこいからな。いい加減にしろ、と。瑠璃にも言ってるみたいでな、瑠璃からも言われたんだよ。自分の結婚式でビジネスしろって…」

え、瑠璃にも言ってたのか…
まぁ、言ってるだろうとは思っていたけど。

「もしもし?当分静かだと思うから安心してていいぞ?それより、話はその事じゃないだろ?なんだ、なんかあったのか?」

さすが…
SEIWADO会長。
私が言おうとしている事に、気がついてくれる。
父が、こういう人だから、SEIWADOが発展していったんだろう。
私にはまだまだ程遠い力だな…
そう思った。