クリスマス当日で家族サービスの上司や彼氏との約束がある同期の子達など、皆が退勤してしまったというのに西さんは今日も帰らない。


いつもなら他にも社員が残業しているので、二人きりにはならないのだが今日は二人きりなのだ。


「志田さんって、不思議な人だね。残業なんて理由がなきゃ苦痛じゃないの?」


「……そうですか? 私は家に帰っても一人で退屈ですし、気が紛れて私には好都合なんです」


「ふぅん? 俺は早く帰りたい派だけどね。仕事が終わらないなら残業しますけど……」


コーヒーマシーンで二人分のカフェラテを注入している間の立ち話。


昼間は忙しくてあまり話す機会がないのだけれど、休日出勤や残業時には合間を見ては話をする。


「西さんはクリスマスなのに残業入れてたら彼女怒っちゃいませんか?」


「……それがさ、居ないから、俺」


「……えー!?」


「大それたリアクションありがとう」


西さんは高学歴、高身長で顔も整っている上に上司と同僚からの評判も良いので彼女が居ないはずはない。