「ツバサ、学校行くよ」
「あ、うん、ちょっと待って」
「……また何かお菓子作ったの?」
「……はいそうです」
「寝たの?」
「二時間くらい……」
ツバサのその返答に、和希はため息を吐いた。
「薬は飲んだの?」
「……さっき、飲んだ」
和希はため息を大きく吐いた。
「今日は学校休みな」
「でも、」
「でもじゃない」

「また外で倒れたらどうするの」

険しい顔をする和希に、ツバサは黙るしかなかった。

「……ごめんなさい」
「学校に電話するんだよ。じゃ、俺行くから安静にしてなよ」
「わかった。あのさ、これ、渡してくれないかな? 菅さんと……神崎、さんに」
ツバサは夜中に作った蜂蜜パウンドケーキを和希に渡した。
「……わかった。ちゃんと渡す」
「ありがとう。行ってらっしゃい」
「うん、行ってきます」
玄関のドアがパタリと閉じられ、僕はそれを数秒見つめると、和希との約束通り部屋へ戻った。