「ツバサ!」
「……か、ずき」
「よかった、わかる?」
「うん」
ツバサの返答を聞き、和希はナースコールを押した。
少しして、看護師と先生がやってきた。
「意識ははっきりしてるね。どこか痛いところとか違和感のあるところとか、ある?」
そう言われて、ツバサは、気付いた。気付いてしまった。
「足が……」
「そうか……。落ち着いて聞いてね。ツバサちゃんの肺癌が、脳に転移した。それにより、体に麻痺が起こっているの」

あぁ、神様は意地悪だ。

脳癌の説明をする先生の声が、ツバサには殆ど届かなかった。

「……それで、いつ頃退院出来るんですか」
そう訪ねるのが、精一杯だった。
「……まず、詳しい検査をする。その結果次第だけど、2週間は様子を見よう。車椅子にも慣れないといけない」
「車椅子?」
「しばらくは、これに乗らないと移動は出来ない」
「そう、ですか」
看護師が持ってきた車椅子を、和希は睨むように見ていた。
先生と看護師さんが病室を出ていくと、和希は、言った。

「俺、バンド辞める」