それまで、『真海ホールディングス』という大企業で長年働いてきたサラリーマンの父には、一般家庭としては少し裕福に暮らせるほどの稼ぎがあった。母は生け花のお稽古へ通えたし、私も妹も中高大と私立の学校に通わせてもらっていたほどだ。

両親や祖父母からは、まるで箱入り娘のように甘やかされ、大切にされる日々。私たちも、そんな家族の在り方に疑問すら抱いていなかった。

けれどもそんな生活は、祖父母が交通事故で急逝してから一変することになる。


一人息子の父が相続登記をして登録免許税を支払い、祖父名義だった土地や建物の相続した約半年後……、我が家には目を疑うような固定資産税が請求された。

毎年国へ納めなければならない税金は、マンションだけでも一千万円以上に登る。
現在私たち家族が住まう祖父母の家の分まで含めれば、その総額は父の年収を遥かに超えていた。

定年退職を五年後に控えた父の収入と残された財産の中では、倹約に倹約を重ねながら、これから先の十年をやり繰りするのが精一杯。
もしも父に今何かあり、私たち姉妹が相続することになれば、今よりもっと大変なことになるだろう。