冬の魔法




空を飛び、向かった先は魔法学校の屋上。屋上には、誰も居ない。

「…ここから、花火を見ようよ」

美影は、フェンスに手をかけながら、私を振り向いた。私は、美影に近寄って「いいよ」と、笑いかけた。

「もうすぐで始まるよ」

美影がそう呟いた瞬間、夜空に1輪の花が咲いた。その花は、とてもきれいで私の目を奪った。

「きれい…」と呟くと、美影は「そうだね」と返した。

花火は1つ2つと増えていき、次第に豪華になっていく。

「氷翠」

美影は花火から目を逸らさずに、美影が私の名前を呼んだ。隣にいる美影に目を移すと、少し微笑んでいる。

「…はい」

「…僕と初めて話した時のこと覚えてる?」

「覚えてるに決まってる」

「良かった…忘れられてなくて」

「…それが、どうしたのさ」

冷たい声でそう言うと、美影は、私の方に顔を向けた。今、美影が浮かべているのは、今まで私にしか見せたことがない幸せそうな笑顔だった。

「氷翠に話を遮られる度に、僕は寂しそうに笑ったでしょ?あれ、無意識なんだ」

「…故意かと思ってた」

「氷翠と、もっと話していたかったんだろうね…僕自身でも分からなかったけど。最初は、寂しそうに笑ってたのは気づかなかった。琥白が、教えてくれたんだ。『お前、若竹さんに話を遮られる度に、寂しそうに笑っているのは何でだ?』って」