「若竹、聞いているか?」
突然、魔法演習の担当の先生に声をかけられた。
「…え?あ…聞いてませんでした」
「珍しいな、いつも、真面目な若竹が…」
授業中、ずっと美影のことを考えていた。美影は、今日1日学校に来ていない。
「…すみません」と、テンションの低い声で謝ると先生だけでなく、クラスメイトの全員までもが驚いている。
「…氷翠ちゃん、なんで謝ってるの?しかも、テンション低いよ。大丈夫?」
クラスメイトは、私が謝ったこととテンションが低いことに驚いているようだ。
「いや…その」と、なんて言ったら良いのか分からずに戸惑っていると…
「あ、紅月さんと何かあったとか?」
「もしかして、近藤くんが居ないから?」
と皆は、口々に言っている。
私は「違うから!」と否定する。
「そういえば、若竹さんってさ…変わったよね」
「変わった、変わった~」
「結構明るくなったし、良く喋るようになったよね~」
「ちょうど、美影くんと仲良くなった辺り?」
「…そうだ!美影なら、いつも図書館にいるぞ」
何かを思い出したかのように、美影と仲の良い男子生徒、山吹 琥白(やまぶき こはく)が呟いた。
「それは知ってるよ」
私は、半分無意識にそう答えた。
「あ、知ってたんだな。今も図書館に居るかも」
「でも、なんで…いつも図書館にいるんだろ?」
1人のクラスメイトの女子が呟いた。私も気になっていることだ。
「…お前らな!今、授業中だぞ!!授業に集中しろ!」
先生が、話に夢中になっている私達に向かって怒鳴った。
「グランドを10週走って来い!今すぐだ!」
先生に、追加でグランドを走らされた私達であった。



