「失礼します」
職員室に入り、担任の先生のデスクへ向かう。
「先生、ノート持ってきました」
「百瀬さん。ありがとうね」
長い髪をして、眼鏡をかけた先生はノートを受け取りにこりと笑った。
「お母さんの件、落ち着いた?」
「……はい。ご心配おかけしました」
「なにかあったらいつでも相談してね。先生、力になるから」
励ますような言葉に、私もにこりと笑って返すと、小さく礼をして職員室を出た。
大丈夫、かな。
私、ちゃんと笑えてた?
『お母さん』、そのたったひと言に心は揺れ、また沈みそうになる。
「大丈夫……大丈夫」
小さな声で、自分に言い聞かせるように繰り返しながら、スカートをぎゅっと握る。
……彼を、探しに行こう。
寂しさが、恐怖が、心を飲み込んでしまう前に。
感情をぐっと堪えて、私は廊下を歩き始めた。



