「部室に服あるから。向こうで着替えるよ」
そして、行こ、というように私の腕を引いて歩く。
目の前を歩く彼の背中はびしょ濡れで、シャツは透け素肌にはりついている。
髪も、濡れてる。
迷うことなく庇ってくれた。
そんな彼の優しさを改めて目の当たりにして、やはり彼はそういう人なんだと感じた。
人混みでうずくまる人を放っておけないくらい。
誰にでも当たり前に、優しさを与えられる人。
彼に掴まれる腕が、また熱を帯びる。
第二視聴覚室へ着くと、そこは先日同様散らかったままの部室が広がっていた。
まだ誰もおらず、真紘先輩とふたりきりだ。
「着替え、着替え……あった」
真紘先輩は置いてあった自分のリュックから、体育着の白いTシャツとタオルを取り出した。
そして躊躇いなくワイシャツを脱ぎ、半裸姿になってみせる。
「きゃあ!」
「わっ、なに」
思わず声をあげてしまうと、彼は驚きこちらを見た。



