「え?」
なにかある?と彼の視線の先を追いかけようとした。
けれど、それより早く真紘先輩が私を抱きしめバシャッと背中に水をかぶった。
あまりにも突然のことに驚きが隠せない。
両腕で強く抱きしめられると、爽やかさとどこか甘さのあるムスクのような香水の香りに包まれて、心臓が思い切り揺れた。
い、いきなりなにが起きて……!?
抱きしめられたまま状況についていけずにいると、中庭のほうからは「ごめんなさーい!」と女子たちの声が聞こえた。
その声に真紘先輩の横から中庭を見ると、その女子たちが必死に頭を下げている。
その光景にようやく冷静になった私は、真紘先輩が私を庇って、ホースの水をかぶったことに気がついた。
「まっ、真紘先輩!大丈夫ですか!?」
「ん、平気平気」
真紘先輩はなんてことないことのように笑いながら、女子たちに手を振る。
そんな彼に私は慌ててハンカチを取り出しその顔を拭うけれど、気休めにしかならない。
「びしょ濡れじゃないですか……あっ!私ジャージ持ってるので着てください!」
「いやいや、悠のサイズじゃ俺入らないでしょ。着れたとしてもパッツパツ」
「はっ!」
言われてみればそうだ!
私のジャージを無理矢理着てパッツパツになった自分を想像したのか、真紘先輩はおかしそうに笑う。



