「悠、とりあえずこっち入って座れば?」
「えと、でも……」
手招きする彼の元へ歩き出そうとはするけれど、3人からまじまじと見られ、やっぱり怖くて入れない。
そんな私の心の中を見透かすように、真紘先輩は笑って私の肩をそっと押して部屋に入れた。
「大丈夫、こいつら見た目怖いけどただのバカだから。特にあの頭赤いやつ」
「なんだと!」
怒る赤髪の先輩に、ほかの先輩たちはけらけらと笑う。
それぞれの見た目とは裏腹な柔らかな雰囲気に、ちょっと安心した。
一歩部室に入ると、真紘先輩は自分が座っていた椅子に私を座らせる。
「で?どうした、もしかして入部届持って来た?」
「いえ、そうじゃないんですけど……」
ちょっと期待していたのだろうか、首を横に振った私に彼は明らかに落胆する。
まだ、決めてない。
だけど、ううんだからこそ。決めるためにここに来た。
「あの、勢いで決める前に、いろいろと聞いてから判断したいと思いまして」
意を決して言うと、真紘先輩は少し驚き、先ほどの落胆から一転して嬉しそうに笑ってみせた。



