「あ、あの、すみません、私……」
彼はじっと私を見るとなにかを察したようだ。
「ヒロ。お客来てる」
そう部室内に声をかけると、室内にまた戻る。
そこでは昨日と同じく楽器や楽譜が無造作に置かれている。
その部屋の中央には真紘先輩と黒髪の先輩、そして昨日もいたふたりも含めた4人が、机を囲むように座りトランプをやっている姿があった。
「俺に客?って……あ!悠じゃん!」
私を見るなりトランプを置き、声をあげた真紘先輩に、全員の視線が一気にこちらへ向く。
「あ!昨日ヒロが連れ込んでた彼女!」
赤い髪の先輩に指差され、ビクッと固まってしまう。
それを見て真紘先輩が呆れた顔をする。
「だから違うって。昨日話した、マネージャー候補。ていうか高田もよく悠がいるの気づいたね」
「かれこれ10分くらいドアの前に誰かいる気配がしてた」
「背ぇ小さいなー!1年?」
真紘先輩、黒髪の先輩、タンクトップの先輩、と一気に話す彼らにどうしていいかわからず私は部室に一歩も入れず戸惑うばかりだ。
そんな私を見かねて、真紘先輩は立ち上がりこちらへ近づいてきた。



