その日の放課後。
私の姿は新校舎2階、第2視聴覚室の前にあった。
もう部活始まってる時間だし、真紘先輩たちいるよね……。
なんて言おう、どんな顔でいよう。
勇気を出して軽音楽部の部室前まで来たはいいけれど、このドア一枚が開けられず、もう10分以上立ち尽くしている。
やっぱり帰ろうか、明日にしようかな。
いや、もしかしたらこのままなぁなぁにしておけば彼も忘れて、話もなかったことになるかも。
でも……それで、いいのかな。
そう戸惑っていると、突然目の前のドアがガラッと開き、男子生徒が現れる。
「ぎゃっ!」
驚き、思わず変な声をあげてしまった私に、目の前の黒髪の男子は無言でこちらを見下ろした。
こ、この人は昨日あとから部室に来た、耳に大きな穴が開いている人……!
拡張?っていうんだっけ。その右耳にはやはり、向こうが見えるくらいの穴が開けられている。
その拡張されたピアスホールと物静かそうな彼の顔を交互に見ていると、部室の中からは「なんの声だー?」と他の人の声が聞こえる。



