そのまま真紘先輩に連れられるがままやってきた新校舎では、なんの催し物もしておらず静かだ。
部室に入りドアをそっと閉めると、同じ校内なのに、まるで別世界のように、にぎわう声は遠い。
彼にとっては久しぶりの部室だ。
アンプや楽譜、自分たちの色で染まった独特の空気を吸い込むようにして、目を細める。
真紘先輩……本当に、来てくれた。聴いてくれていた。
そのことが嬉しくて言葉が出ずにいると、彼は掴んでいた手を離し、窓際に歩き出す。
「……へたくそ」
「へ!?」
へ、へたくそ!?
って、私のさっきの歌のことだよね?
こちらに背中を向けたまま言われた言葉に、驚きから声が出る。
「腹から声出てないし、震えてるし、裏返ってるし力みすぎ。どうせここ何日かでライブやるって決めて、それから慌てて練習したんでしょ」
うぅ……バレてる。
自分にとっての精いっぱいも、付け焼き刃だと彼にはバレバレだったのだろう。
自分の歌を私にあんな風に歌われて、怒ってるのかもしれない。
だけど私も、中途半端な気持ちで歌ったわけじゃない。
誤解のないよう、それだけは伝えようと「あの、」と言いかけた。



