「えぇ!?文化祭ライブで、ボーカル!?」
翌日。
朝の教室内に、莉乃ちゃんと松永くんの大きな声が響き渡った。
目を丸くして、大きな驚きを見せるふたりに、私は苦笑いをこぼす。
「う、うん。やってみようかなって、思って」
「あの引っ込み思案であがり症な悠が!?一体なにがあったの!?」
「なにがというか、その……」
莉乃ちゃんに肩を掴まれたままガクガクと揺らされ、私の首は前後に激しく揺れる。
そうだよね、ふたりとも驚くよね。
私だって、まさか自分が人前で歌うだなんて思いもしなかった。というか、これまでだったらこんなこと絶対ありえなかった。
自ら提案なんてしなかっただろう。
「もしかして、最近学校来てないっていう、あの先輩のためか?」
真紘先輩の噂を聞いていたのだろう。ぼそ、とたずねた松永くんに、私は小さく頷いた。
「自分にどれだけのことができるかなんてわからないけど……でも、頑張ってみたいんだ」
真紘先輩のため、なんて言いながら、本当は自分のためなのかもしれない。
自分を変えたいとか、彼に思いを届けたいとか、歌いたいと思ってほしいとか。
どれも、一方的で押し付けでしかない思い。
それをぶつけていいのだろうかとも、思う。
だけど、なにもしないまま泣くより絶対いい。



