「はーい!」
バン、と玄関のドアを開けたのは真紘先輩の弟くん。
弟くんは門のところに立つ私を見ると、すぐにピンときたらしい。
「ヒロ兄ー!彼女きたよー!」
「え!?」
家の中に向かって大声で叫ぶ弟くんに、ついこちらも声が出る。
するとまた家の中からはドタバタと足音がして、マスク姿の真紘先輩が飛び出してきた。
「えっ、悠!?どうしたの!?」
「あの、お見舞いに……」
話していると、真紘先輩のお母さんや双子ちゃんたちもぞろぞろとやってくる。
真紘先輩はそれを見ると嫌そうな顔をして、靴を履き外へ出る。
「ごめん悠、外でいい?」
「私は構いませんけど……真紘先輩、体調は大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫」
そして真紘先輩は、私の腕を引き歩き出す。
私の一歩前を行くグレーのパーカーを着た彼は、一見元気そうだ。
よかった、高熱とかではなさそう……。
安堵しながら、連れられてきたのは近くにある公園だった。
ブランコと滑り台、シーソーがあるだけの小さな公園には、もう夕暮れ時刻ということもあり、誰もいない。
その端にあるベンチに座ると、真紘先輩は近くの自販機で飲み物を買ってきてくれた。



