「はい、誕生日おめでと!」
「えっいいの?ありがとー」
彼女たちはプレゼントを手渡しおめでとうを伝えて、と私が迷っていた行為をいとも簡単にしてみせる。
「私からはねぇ、手作りクッキーだよ。昨日夜中まで頑張ったんだ〜」
「あたしはストール!ボーカルは喉冷やしちゃダメだからね」
私も私も、と次々に女子が駆け寄り、あっという間に真紘先輩の両手はプレゼントでいっぱいになった。
本当だ、すごい人気……!
まるで漫画の中の王子様のようなモテっぷりに、私とは違う世界の人なんだとつくづく思い知る。
入る余地、ないな。
伝えたいって思ったはずなのに、勇気がなくてまた踏み出せない。
……たくさんのプレゼントの中に、あとで紛れ込ませておけばいいや。
言葉で伝えられなくても、遠回しでも、ほんの少しでも彼に気持ちが伝わるのなら、それで。
そう諦めたように言葉を飲み込み、逃げるようにその場をあとにした。



