「正しいかどうか決めるのは、周りじゃなくて悠自身だよ」
けれど真紘先輩から返ってきた答えは、『正しい』でも『間違い』でもない言葉。
「え……?」
「悠が『これがしたい』『だからこうする』って胸を張って言える道なら、周りがとやかく言っても関係ないんじゃない」
自分がこうしたいと、本当に強く望むのなら。
それがきっと、私にとっての『正しい』道。
「でも敢えて俺からなにか言うのなら、悠はそれで後悔しない?」
「後悔……」
「自立するために頑張るのもいい。だけど状況が許すのなら、大学行ってやりたいことを見つけてやりたい仕事につくほうが、未来の悠は楽しいんじゃないかなって俺は思う」
自立のための仕事ではなく、自分がやりたい仕事と出会うため。
「俺が悠のお父さんだったら、そのほうがきっと嬉しいよ」
真紘先輩はそう言って、目を細め優しく笑った。
不思議。
迷っていた心が、彼の言葉ひとつでストンと腑に落ちてしまう。
私はお父さんのためを理由に、その道を選ぼうとしている。
けど、お父さん自身の望みはそうじゃないかもしれない。
だからこそ『話し合おう』とお父さんは言ってくれていたのに。
頑なだった自分が、少し恥ずかしくなった。



