「はい、ウーロン茶しかなかったけど」
「ありがとうございます」
私がウーロン茶が入ったほうを受け取ると、真紘先輩は自分の分のコーラが入ったカップに口をつけた。
すると、ホール内にいた男の人が真紘先輩を見つけて近づいて来る。
「おっ、ヒロじゃん。ひとり?」
「いや?デート」
で、デート!?
突然の真紘先輩の発言に私が驚くより先に、男性の方が驚きの声をあげた。
「彼女連れ!?マジで!?」
そして真紘先輩から私の顔へ視線を移しまじまじと見る。
「しかもかわいい……おーい!大変だ!ヒロが彼女連れて来たぞー!」
そう叫びながら楽屋がある方向へ駆けていく彼に、周囲のバンド仲間であろう人たちからは「えぇ!?」とざわつく声が聞こえた。
デートって、彼女って……い、一体どうして。
困惑と恥ずかしさで顔が熱くなる。
「あ、あの……今のは?」
「あぁ、ごめん。基本いい奴らだけど女癖悪いのも多いから、そういうことにしといて」
意図をたずねると、真紘先輩は普通の顔でそう述べる。
そ、そっか。そう言っておけば無駄なトラブルも防げるもんね。
そういうことかと納得する半面、『彼女』の響きにまだドキドキしている。



