こんな女の下で働くなんて虫唾が走るが、仕方ない。これでも私はお母さん以上に稼いでいるのだ。
うっかり口を滑らせて愛莉子の親の機嫌を損ねたら最後、うちの家庭は崩壊する。
「お嬢様、お待たせいたしました」
「下がっていいわ」
「畏まりました」
私は今日も、気持ち悪い微笑みを顔に貼り付けながら、働く。
「遥華」
「お呼びでしょうか」
愛莉子が嬉しそうに私を呼びつけたのは、私の仕事が一段落つき、今まさに遅い昼食を取ろうとしていた時だった。
この野郎、食べ終わるまで待つくらいできんのか……
「今から瀬戸家に行くわ、友好を深めるために」
「……といいますと」
「側付きはあなたを連れて行くわ。今日は泊まりよ」
「……畏まりました」
まじかよ。こんな急に……
今日はお母さんも泊まり込みで仕事だから、私が帰らないと秀弥は1人だ。
秀弥にだけは、嫌な思いをさせたくなかったのに。
「あなたに弟がいるのは知ってるけど、私直々の指名、しっかり勤めを果たしなさい」
「御意」
愛莉子の顔は歓喜に満ち溢れている。
