持ち場というのは……この無駄に女らしい部屋に住む主の側付き……
「今日の朝食は、お嬢様のお好きなエッグマフィンでごさいます。今、お食べになりますか?」
「お腹がすいたわ。今すぐ持って来なさい」
「畏まりました」
私がこの偉そうな女––––––草伽家の跡取り娘、草伽愛莉子にこうしてこき使われるのには理由がある。
私の家は元々は本庄グループといって、最初は小さかったものの、社長であるお父さんの経営が上手くいき、最盛期には御三家である草伽、瀬戸、三上と並ぶほどの大手の企業だった。
もちろん、私はとても裕福な暮らしができていた。
『遥華、おいで』
『お父さんっ!おかえり!』
そして、家族全員が仲良く、幸せに暮らせていた。
だけど、幸せは長くは続かなかった。
私が小学4年生……秀弥がまだ小学2年生だった頃、お父さんが急に心不全を起こして倒れたっきり、目を覚まさなかった。
お父さんはそのときまでは全然ピンピンしてたし、私たちに苦労をかけることを嫌って、仕事のことについてはお母さんにも何も話をしていなかった。
突然のお父さんの死によって混乱し、跡を継げる人がいなくなってしまった本庄グループは経営が危うく、大きな借金によって潰れてしまった。
没落貴族とは、まあ私たちのことを言うのだろう。