パラ、パラ、パラパラ、ザー、ザザザザー。


春が過ぎ、夏も終盤に差し掛かる頃。

まだ窓の外には街灯以外の明かりがない。



「ねぇちゃん、早く起きないと遅刻するぞー」


「……眠い」



私、中学2年生の本庄遥華は、平凡な夏休みを……



「草伽の娘に殺されるよ」


「おはよう秀弥、今日もいい天気だね」


「土砂降りだね」



送れているわけがなかった。



「……なんかジメジメしてると思ったら」


「音でわかるだろ……」



私の部屋にノックもせずに入ってきて、今私のベッドの隣で仁王立ちしながら呆れた顔でそう呟くのは、弟の秀弥。


目覚まし時計は、4時にセットしたはずなのだが、どうやら機能しなかったらしい。今長針は3を指している。



「あー今日も頑張るかぁ……」



ベッドからぬくぬくと起き上がり、顔を洗い、朝ご飯を食べ、歯を磨く。


そして、



「いつまで経っても慣れないなこの服……」



一人でそう呟きながら真っ白なブラウスと真っ黒なひらひらのスカートを履き、胸元にこれまた真っ黒なリボンをつける。


俗に言うメイド服よりちょっとおしとやかにした感じの代物。



流石に街中をこれで歩くわけにはいかないから、暑いけれど緑色のカーディガンを羽織る。