『なんですって?子供の部外者が口出すんじゃないわよ!』
周囲がざわめきだした。
女は、まだ気づかない。
『どういう教育を受けてるのかしらねこの子!親はさっさと私の前に出てきて謝りなさいよっ!』
どこかで、何かが切れる音がした。
『うちの子が、何だって?』
そこには、威圧感たっぷりの1人の男。
『え、せ、瀬戸様?』
このパーティの主催者のその男。さっきの少年は……瀬戸グループ、御三家の1つである企業の息子。
やっと気づいたか。
女は急に我に返る。
『あ、ええとっ、』
『まだ小学生の女の子のミスも許さないような心の狭い女に、教育について口出しなどされたくない』
『いえ、あ、これはっ……!』
顔に焦りを露わにした女に、瀬戸家の主の男は一言、
『出てけ』
と言い放った。
少年は泣きながら謝っていた少女に駆け寄り、『大丈夫、気にしなくて大丈夫だから』と小声で告げると、少女は『ありがとう、ありがとう』と目に涙をいっぱいに溜めて言うのだった。
少女は、そのとき見た少年の笑窪と、耳元にあった小さなほくろを、今でも覚えている。