この時、私はふと気付いた。
「暁人様、素、出てますよ」
そう、この人は裏表があるとは踏んでいた。だが、私たちには見せていなかった。というか、お兄さんの和人さんにも見せていなかった気がする。
「あ、ほんとだ」
暁人さんも今気付いたらしい。ハッとした顔をして、私の顔を一瞬見ると、「まあいっか」なんて言ってまたさっきの怠そうな顔に戻った。
「なんか、あんたの前だと無意識になっちゃったみたいだ。あんたが同類だと思ったせいかな」
「……といいますと」
「昨日からあんた、なんか気持ち悪いんだよ、完璧すぎて。読めないよ、あんたの気持ち」
暁人さんは、ふんっと馬鹿にしたように笑った。
「俺より完璧な嘘つきに会ったのは、あんたが初めてだよ、遥華」
なんだ、バレてたのか。
これは、私の嘘がバレたわけじゃない。
私の嘘が完璧すぎて、逆に嘘が見えなかったから。
だから、彼は気付いたんだろう。
「同類……ですか」
「俺の前では、素になれよ」
えっ?
「あんたさ、気持ち悪いから。素のあんた、俺に見せろよ」
あぁ、私はこの言葉を求めていたんだ。