「・・・オッケイ。わかった」


ん? 

なに今の低い声。

顔を上げると

ルームミラーの視線が消えていた。

代わりに背中越しの声が聞こえた。


「よっしゃネエチャン。
 ちいと飛ばすけ、つかまっとけよ」


なんスかそのシブめの声は。

そう問う間もなく

次の瞬間車はいっきに加速し、

その反動でアタシはのけぞる。

かまわず車はどんどん加速していき、


窓の外はものすごいスピードで後ろへと流れていって

でもそれでも加速は止まらず

ついには亜光速を越え

タクシーはアタシを乗せたままワープを開始した・・・

ってそれは嘘だけど

でもあながち大げさでもないほどにすごいスピードで

次々と他の車を追い越し、

右へ左へと切られる急ハンドルに

アタシの体もシートの上で

右へ左へゴーロゴロ。


「ちょ、ちょうちょ・・・」


アタシはか細い抗議を上げようとするけど

爆音に阻まれて運ちゃんには届かない。

あて、ベロかんだ。

エンジンの悲鳴と

無茶な追い越しに怒った他車のクラクションに、

彼に追いつけるのかという心配以前に

我が身の生命の危険を感じ始めたとき、


キキ~~~ッッッ!!!


車は急ブレーキ。

アタシは運転席の背中に

顔面から激突、

モロに鼻っ柱をクリーンヒット。

あ、お星様キラキラ。


「こっ、殺す気かっ!」