「ああ、そのことね」

そう返事をした柴崎さんに、私は気を落ち着かせるために深呼吸をした。

「ごめんなさい!」

私は謝った。

「私、柴崎さんとおつきあいすることはできません」

そう言った私に、柴崎さんは何も言わなかった。

「夫の恋人とつきあうことはできないです…。

ましてや、夫から恋人を奪うことなんて…」

「もういいよ」

私の言葉をさえぎるように柴崎さんが言った。

「も、もういいって…」

それはどう言う意味なのだろうか?

「あの…これは私がちゃんと考えて出した声なので、北居くんは」

「ひーくんとは別れないし、ひーくんに変なことはしないから大丈夫だよ」

そう言った柴崎さんに、私はホッと胸をなで下ろした。

北居くんに害がくることはなさそうだ。