「そんじゃ、荷物を全部運んだらもう帰るから」

「うん、頼んだ。

後、シバさんに“よろしく”って言っといてね」

「あいよー」

北居くんは返事をすると、次の段ボールを運ぶために私の前から離れた。

「さてと、続き続き」

その後ろ姿を見送ると、私は作業の続きを始めた。

私たちは愛だとか恋だとか、そんなキレイな理由で結婚した訳じゃない。

簡単に理由を説明すると、“お互いのお互いによるお互いのための結婚”と言うヤツである。

私は仕事を辞めるために、北居くんはつきあっている人を隠すために、私たちは形だけの結婚を決意した。

別居・生活費の援助・子供は作らない――などと、お互いにいろいろと話しあって条件を決めた。

何故私たちが形だけの結婚を決意したのかは、それはまた別の機会に…。