「君は早く仕事を辞めたいと思ってる」

「うん、辞めたいよ」

「僕はちょうどいい結婚相手を探してる」

「そうだね」

「何が言いたいかって?」

北居くんはじっと私の顔を見つめると、
「君と僕は手を組んだ方がいいと言うことだよ」
と、言った。

「手を組む?」

私が首を傾げて聞き返したら、
「はっきり言うと、僕らの関係に恋とか愛とかそんなキレイな理由は存在しない。

これは、お互いのお互いによるお互いのための結婚だ。

そう思わないか?」

北居くんは言った。

「お互いのお互いによるお互いのための結婚、なるほどね」

私が返事をしたら、
「神田川、改めて言おう」

北居くんは手を差し出した。

「僕と手を組んでくれ」

そう言った北居くんに、
「喜んで」

私は彼の手に自分の手を重ねると、握手を交わしたのだった。

こうして、私たちは“形だけ”の夫婦になることを交わしたのだった。