「僕と一緒に会社経営をしている6歳年上のシバさん――名前が柴崎広次(シバサキヒロツグ)だから、“シバさん”って呼んでいるんだ――とつきあっているんだ。

周りには自分がゲイだと言うことをカミングアウトしていないし、シバさんのことも仕事仲間だって言っているんだけど…年齢的にも世間的にも、周りから結婚のことを急かされるようになっちゃって」

「うん」

「シバさんと別れるつもりはないし、それで周りを黙らせるためにカモフラージュの妻を…」

「一応聞くけど、シバさんは北居くんが形だけの結婚をすることを知ってるの?」

そう聞いた私に、
「知っているも何も、それを提案したのはシバさんなんだ」

北居くんが答えた。

「なるほど」

私はコクリとカプチーノを口に含んだ。

それならば、大丈夫だな。