とある村に、大昔からある伝説があった。

村の近くにある黒い森には邪悪なお茶好きの魔女が住んでいて、人間をお茶会に招待して人間をネズミやカエルに変えて遊んでいるという伝説。

その伝説が無くても、黒い森は一度入ったら生きては帰れないと噂され、村人たちは『死の森』と呼んで誰も足を踏み入れることはなかった。

黒い森の中からカラスが一羽、飛び出してくる。口に自身と同じ漆黒の手紙を持って……。

カラスはその手紙を、六軒の庭に落とした……。



朝が来れば、静寂という言葉は遠くに消えていく。それほどまでにこの村は賑やかだ。

パン屋の美味しそうな匂いが道に漂い、花屋が綺麗な花束を作っている。子供たちは走り回ったり親の手伝いをし、女も男も朝から元気に働く。

「お母さん、おはよう！庭の掃除をしてくるわ」

仕立て屋の一人娘であるエリーゼは、ネグリジェから着替えると朝食を作る母に言った。

「そうね、お願いしようかしら」

母が振り向き、微笑む。

エリーゼはほうきを手に、外へ出た。