数秒後に振り払われたが、いよりは少しだけ、俺のことをちゃんと視界に入れてくれ、俺はもう一度いよりの手を握り締めた。

「いよりだけだから。俺はいよりと、やり直したいから」

 だからと言ってその日、いよりが急に優しくなったり、おしゃべりになったりすることはもちろんなく、食事を終えたらすぐに一葉ちゃんと帰ってしまったが、それで十分だった。

 いよりとちゃんと話せただけで、一歩前進だし、俺の気持ちはちゃんと伝えられた。

 本気だから。俺はいよりと、やり直したい。

 思っているのは、ただ、それだけだから。