「幸さん、グラスの準備をしたいから、こっちに来て」

 私は森川店長と人数分のグラスを布巾で磨いてゆく。

「挙式して、ご夫婦は正午にレストランに到着予定なの。そして、午後一時時から食事会スタート。結婚式かぁ、いいなぁ」

 アラフォー独身の店長は、うっとりした表情を見せる。

「好きな人と結婚するなんて、幸せなんだろうね」

「……そうですね」

「幸さんは結婚願望とかある?」

 私に離婚歴があることを知らない店長は、何気なく聞いてきたらしいが、私は曖昧に笑ってその場を逃げ切った。