~美野田いより《みのだ いより》~ 「これ、何……?」 床に落ちたそれは“コンドーム”であり、私は恐る恐る拾い上げると、夫の美野田駿《みのだ しゅん》の掌の上に乗せる。 「知らない」 もう一度聞いても、駿ちゃんは知らない、と言って、会社用の黒い鞄を持って玄関へ歩いてゆく。 「私のこと、好きだよね……」 「好きだよ」 「……そっか、そうだよね」 「うん、じゃあ行ってきます」