「ちなみに、彼は信用できるのか?」

 セシリアはまっすぐにルディガーを見つめた。

「少なくとも、私はそう感じました」

 身元もしっかりと判明しているし、ジェイドの言い分に不審な点はなく筋は通っていた。雰囲気を探ってみたが嘘をついている素振りもない。

 ジェイドの言っていた被害者の情報を今し方確認してみたが、彼の元へ通っていたのも間違いない。そしてなにより……。

 セシリアは強引に話をまとめる。

「今日の報告は以上です。私はしばらくこの案件にかかります。再び彼の元を訪れる際は必ず元帥に前もって報告しますから……では失礼します」

 頭を下げ部屋を出て行こうとしたセシリアだったが、ドアに手を伸ばそうとしたところで突然右腕を掴まれた。

「セシリア」

 どうしてか名前を呼ばれたのが先ほどのジェイドとかぶる。おかげで反応が一瞬遅れた。ルディガーはセシリアを自分の方に向かせるとドアに手を突き、彼女の行く手を阻んだ。

「まだ、俺になにか隠してるだろ」

 疑問ではなく確信で尋ねる。すぐ近くで見下ろされ、影がセシリアの視界を暗くする。にも関わらず、ルディガーの真剣な表情ははっきりと瞳に映った。

「彼になにを言われた?」

 セシリアはふいっと視線を逸らした。

「……いえ。とくになにも」

「本当に?」

 声がさらに近くなり、見えないのに迫力を感じる。まるで詰問だ。そのとき顎に指をかけられ、セシリアは強引に上を向かされた。

「俺の目を見て答えて」

 ルディガーの懇願にも似た表情にセシリアの瞳も心も揺れる。

「今回の件には関係のない話です」

「それを決めるのは俺だよ」

 もっともな言い分にセシリアは観念する。ややあって乾いた唇をゆっくりと動かした。